金融庁金融審議会が提出した、95歳まで生きるには年金だけでは老後資金を賄えず、夫婦で2000万円の蓄えが必要になるとの報告書を巡り、与野党の見解が分かれています。しかし、この論争を聴いて私は焦点が違うように思います。
報告書の骨格は、長寿化と公的年金の役割縮小を展望し、老後に向けた資産形成の環境整備を説いており、妥当な内容と思います。厚生労働省も「年金は老後生活の柱ではあるが、年金だけで暮らせると言ったことはない」と反論しています。経済産業省の産業構造審議会の「2050経済社会構造部会」で、2018年に65歳を迎えた夫婦が95歳まで30年間暮らす想定で試算すると、生活費が1億763万円、公的年金収入は7868万円で、2895万円の不足が生ずると報告しています。この年金の根拠は厚生労働省から提供されています。
厚生労働省の「モデル世帯」の年金月額のイメージは、 夫は…平均的な収入で40年間働いたサラリーマンで、報酬比例年金(91,500円)、基礎年金(65,000円) 妻は…ずっと専業主婦で基礎年金のみ(65,000円)で、併せて221,500円としています。私はこのモデルも実態とは違い、もっと低いと思います。
もっと大変なのは、就職氷河期に世に出た現在35歳から45歳位の非正規雇用者のことです。年金には未加入か、加入していても国民年金のみです。この人たちを正規雇用にしないと、将来の年金は今の問題どころではないと思います。与野党で論争している時ではありません。公的年金、貯蓄、就労という面から、老後の問題を与野党合同で建設的な議論を進めるべき時と思います。 |